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  • 中脇 秀勝

日本の高齢者の暮らしは良くならない。


今回のスペシャルインタビューは、中央大学教授で社会学者の山田昌弘さんです。有名な著書に、1999年に出版した「パラサイト・シングルの時代」があり、親元に寄生して結婚しない若者たちを取り上げたパラサイト・シングルは流行語にもなりました。

高齢者の暮らしが良くならないことはある程度予想されることではないかと思われますが、山田さんは、「人とつながり、小さな幸せを見つける技術を磨くこと」が大事と結論付けています。

非常に大切なコメントもあり、皆さんの参考にして頂けたらと思います。


Q 日本の高齢化が急速に進んでいます。このままでは、日本社会はどうなっていくのでしょうか。

A 高齢化は世界共通の課題ですが、65才以上の高齢者が人口に占める割合(2021年)は、日本がトップで29%、次いでイタリアが23%ですが、日本には少子化という深刻な課題があります。厚労省の統計では、2040年には日本の介護人員が100万人不足するということですが、これにより、ヘルパーの訪問回数が週3回から週1回に、入浴回数が週1回から2週間に1回に減ると考えられます。

生活費(年金)が減り、介護回数が低下し、生活の質が低下して行くことは避けられません。


Q 65才以上の高齢者の約半数が一人暮らしです。将来を考えると大変不安ですが、高齢者の生活はどうなるのでしょうか。

A 経済格差はもちろんですが、それよりも家族格差がより深刻です。

たとえば、団塊の世代の結婚率は90%・離婚率は10%ですが、この世代は家族がいる世代です。独居高齢者でも、何かあったら家族が駆け付けてくれます。亡くなったら、引き取り手もいます。

ところが、50歳時点で一度も結婚したことのない生涯未婚率は、男性で25.7%・女性で16.4%です。離婚増加もあり、配偶者がいないまま高齢者になる人が3割に達しています。子供や孫に囲まれて幸せに暮らす高齢者と、家族もなく孤独で孤立して暮らす高齢者。これが、家族格差です。孤立した高齢者は、要介護になっても家族に面倒を見てもらうことは出来ず、誰にも気づかれずに孤独死する道をたどることになることが多いのです。


Q 家族格差は、どのようにして広がってきたのでしょうか。

A 25年前にパラサイト・シングルの時代を出版しましたが、パラサイト・シングルとは、20才を過ぎても親と暮らし、その後も結婚しないで親に寄生し、親のお金でリッチな生活を謳歌する気ままな若者たちのことですが、出版時20才と50才だった親子は、今では45才と75才です。40・50を過ぎても結婚せず、親の年金で暮らしている人はたくさんいます。

親が亡くなって年金が途絶えたら、その子供には、絶望しかありません。親の資産を食いつぶし、仕事もなく、社会的に失うもののない彼らは、言わば行動をさえぎるもののない「無敵の人」です。京アニ事件や総理銃撃事件なども、定職もなく、家族との縁も希薄な、「無敵の人」による犯罪でした。


Q お話をお聞きしていると暗い気持ちになりますが、今後、日本の高齢者が幸せに生きる方法はないのでしょうか。

A 学生からも私の講義を聞いていると暗くなるとよく言われます。(笑)私は学生たちに、君たちも統計上は4人に一人は孤立することになるので、社会から孤立することがないように人とのつながりを持つようにするべきと話しています。

人には、親しい人と一緒に暮らしたいという欲求があります。親密な関係を持つ人なしでは、人は生きていけないのです。高齢者が孤立しないで幸せに生きて行くためには、人とのつながりを持つことが大切です。そのために、私は、今後高齢者が幸せに余生を送るために「中高年の婚活推進」を提案しています。再婚は相続問題もあるため、中高年同棲という形をとっている人もいます。あるいは、遊び友達でも良い。


Q 他にも高齢者が幸せに暮らせることがあったら教えてください。

A 婚活、推し活、小さな幸せを探す技術をこれから身に付けることが大事です。

一つは、ある程度お金を持っておきましょうということ。旅行友達、茶飲み友達を作り、孤立しないようにしましょう。

それから、小さな幸せを探す技術を磨きましょう。学生にどのような時に幸せを感じたか聞いたら「新しいハーゲンダッツ」を食べた時が幸せ、というのがありました。わずか300円で買える幸せです。何十万円というブランドバッグではない。バブル崩壊以降に生まれ、右肩下がりの経済しか見てきていない今の若者は、小さなことで幸せになれる技術をどんどん発達させています。これからの高齢者も、小さなことで幸せを感じる方法を見つけていくべきです。

今後年金も増えない、介護も良くならない、すべてが衰退していく中でも、小さな幸せを身に付けられる人は強いのです。

お手本は、イタリアですね。産業が衰退しても観光収入で稼いでいく、おいしいものを食べて仲間と歌ったり飲んだりして、楽しく暮らしていく。孤立しないで、人とつながっていくことが何より大事ではないでしょうか。



山田さんは、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得後に退学、「家族社会学」が専門です。今後、30年は続く高齢化社会。個別の家庭に深く関与する家政婦紹介所として、貴重なお話を聞かせていただいたことに感謝します。

公益社団法人 日本看護家政紹介事業協会正会員

熊本市 サン光家政婦紹介所

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